

「スミフル」バナナはいいバナナ?
~日系バナナ企業による生産現場の真実~
スミフルバナナの梱包工場労働者への寄付のお願い
ミンダナオ島コンポステラ・バレー州にある「スミフル」のバナナ梱包工場の労働者たちは、低賃金と劣悪な労働環境の是正、そして正規雇用を求めて労働組合NAMASUFA(ナマスファ)を結成し、長年にわたり声を上げてきました。
2017年6月には、フィリピンの最高裁が労働者をスミフルの正規の被雇用者として認める判決を出したにもかかわらず、スミフルはNAMASUFAとの団体交渉にも応じなかったため、組合は正式な手続きを経てストライキに踏み切りました(2018年10月1日)。しかし、そのストライキへの参加を理由に労働者らが懲戒解雇される、組合員が脅迫を受ける・銃撃されて死傷者が出る、さらには放火でNAMASUFA委員長の自宅を含む民家2軒と組合事務所が全焼するという事件まで起こってしまいます。
※問題の背景や経緯については、本ページ「タイムライン」などをご覧ください。
私たちエシカルバナナ・キャンペーンは、そうした状況を見過ごすことはできないと考え、スミフルや元株主である住友商事(注)に問題の解決を訴えて幾度も働きかけをしてきました。また、労働者たちの訴えを日本の市民に広く伝えるため、2019年6月にはNAMASUFA委員長ポール・ジョン・ディゾンさん(通称PJさん)と理事のジャミラ・セノさんを日本に招聘しています。
PJさんとジャミラさんの訴えは、報告会の動画をご覧ください(逐次通訳)。
https://www.youtube.com/watch?time_continue=42&v=2VKGJrJtTDg
また、ジャーナリズムNGOワセダクロニクルで連載中のシリーズ「バナナと日本人」でもお二人の闘いや人となりについて取り上げられています。
http://wasedachronicle.org/articles/banana/ba9/
<カンパ支援のお願い>
来日したPJさんは、放火事件で自宅が全焼してしまいました。
>放火事件の詳細は、こちらをご覧下さい。
http://wasedachronicle.org/articles/banana/ba3/
住む場所を失ったPJさんの家族9人は、身の安全のためにも町を離れ、親族の元に身を寄せたままです。また、同じ敷地に自宅があったNAMASUFA前委員長ヴィセンテ・バリオスさんの家族10人も家が全焼し、住む場所を奪われました。この2つの家族の自宅を再建するには約240万ペソ(約500万円)が必要ですが、梱包工場に復職できたとしても、以前とほとんど変わらない低賃金では、その資金を貯めることは非常に困難です。(参考:これまで梱包工場では、法定最低賃金しか支払われてきませんでした。現在の同地域の法定最低賃金は一日391ペソ。)
そこで、PJさん一家、バリオスさん一家の自宅再建のための寄付を呼びかけます。
必要事項(お名前/ご住所/お電話番号/ご支援金額/用途指定寄付(バナナ)であること)を下記メールアドレスまでお知らせのうえ、お振込をお願いいたします。
【振込先】
1)ゆうちょ銀行 〇一九支店(019) 当座口座 0163403 名義: アジア太平洋資料センター
2)郵便振替口座 00160-4-163403 アジア太平洋資料センター
【お問い合わせ先】
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)/担当:田中
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
TEL:03-5209-3455
E-mail:office (@) parc-jp.org
「スミフル」とは
2019年6月現在、日本の住友商事株式会社が出資するバナナ事業者で旧名称は「住商フルーツ」。現在の本社はシンガポールにあり、日本でブランド展開する「スミフル・ジャパン」と現地生産管理を行なう「スミフル・フィリピン」はその子会社にあたります。
日本に入ってくるバナナのおよそ1/3のシェアを持つNo. 1ブランドです。
「甘熟王」、「熟撰美味しいバナナ」、「スミフルバナナ」など人気ブランドを展開しているほか、トップバリュなどプライベートブランドへの提供も行っています。
<スミフル・ジャパン概要>
設立:2016 年2 月1 日
代表者:代表取締役社長 伊藤順次
資本金:3 億円
売上高:452 億円(2016 年3 月期)
本社:〒151-0071 東京都渋谷区本町3-12-1
住友不動産西新宿ビル6 号館17 階スミフル・ブランド・ロゴ
タイムライン
スミフルフィリピンとバナナ梱包工場で働く労働者らとエシカルバナナキャンペーン実行委員会のアクション経緯詳細
現場から告発されている問題
「スミフル」は日本の住友商事株式会社も出資するバナナ事業者です。日本では「甘熟王」などの名称でブランド展開を行なっています。同社はフィリピン・ミンダナオ島で12000ヘクタールの農地を管理し、キャベンディッシュ種のバナナを生産するほかパイナップルやパパイヤの生産・輸出に関わっています。
そのスミフルの農地では数多くの問題が現地の住民・農家や労働者から告発されています。
フィリピンのバナナ生産事業者は自社の土地として所有できる土地には限りがあり、多くの土地は農民からリースで借りている土地や契約農家として独占栽培契約を結んだ農地になります。それら契約書には恐るべき条件がいくつも―。
- 工場労働者の搾取
2018年10月31日18:00ごろ、コンポステラ・バレー州にある「スミフル」の梱包工場340で働く労働者であり、現地の労働組合メンバーであるDanny Boy Bautistaさん(31)が所属不明の男らに銃撃され、4発の銃弾を受けて即死する事件がありました。
なぜ彼は殺されなくてはならなかったのでしょうか? 彼の殺害にかかわった犯人や動機の特定はされていませんが、周辺情報と合わせて考えると、彼の殺害と労働者らの訴えが無関係ではないように見えてきます。
11月8日にはDannyさんと同じ労働組合のメンバーJerry Alicanteさんが、所属不明の男に銃撃され、二発の銃弾による負傷を追いました。その数日後にも、他の組合メンバーが所属不明の男らに発砲されたとのことです。
11月29日深夜には組合代表の住宅が放火されました。そして翌日、放火直後に消火されていることを確認しにきたた男らが再び来て、住宅に向かって8発の銃弾を発砲する事件がありました。
12月15日には同じ組合代表住宅が再度放火され、同じ敷地内にあった親戚宅および組合事務所まで、今度は全焼してしまいました。
現地は発砲事件・放火事件が頻発するような地域ではなく、組合員だけが狙われるのには、事件に関連性があることが疑われています。「スミフル」がバナナの生産拠点にしているミンダナオ島コンポステラ・バレー州では約2200ヘクタールのバナナ農園が広がっています。そこの9つの梱包工場からは毎日19000箱(約260トン)以上のバナナが出荷されています。
そこでは、しかし、労働者らが低賃金と長時間労働に命がけで抗議の声を上げています。
NAMASUFA労働者らの労働環境
NAMASUFA労働者はなぜそこまで待遇改善を求めるのでしょうか?
聞き取り調査の中から見えてきた劣悪な労働環境を一部紹介します。
・労働時間は長いときには一日23時間
ある梱包工場で働く同僚らは長いときには朝6時半に工場に入り、家に着くのは翌朝6時になることもしばしばあると証言しています。連日の勤務になる場合には一時間足らず休んでまた出勤です。・圧縮労働週間制度の適用
NAMASUFAの労働者らは通常の一日8時間の週5日ないしは6日間の勤務ではなく。週3日ないしは4日間の勤務でその分標準労働時間が12時間に定められています。すなわち労働時間が8時間×5日間=40時間、あるいは8時間×6日間=48時間の時間を12時間×3日間=36時間、あるいは12時間×4日間=48時間に圧縮される制度です。人によってはそのことによって残業代が十分に払われないと証言しており、そうでなくても働ける日数が限られてしまうために収入が減ってしまいます。
こうした労働時間制度は正規雇用の職員には適用できません。そのため、NAMASUFAの労働者らは正規職員になることで、このような無茶な労働時間にならずにすむのです。・薬品から体を守る防具は自腹で
バナナが日本につくまでの間に黒くなったりしないように、様々な薬品が工場では使われます。しかし、マスクや手袋、エプロンなどの支給が十分ではないことが指摘されています。外部からの監査が入る際には新しいものが支給されるとのことですが、すぐに破れたりしてしまうので、その間労働者らは自分で防具を購入しなければなりません。お金がなければ素手で薬品や刃物を扱うこともあるようです。・問題を訴えられない監査
「スミフル」の梱包工場はISOの経営企画を取得しているために、定期的に外部から監査が入ります。ところが、監査官は現地の言葉が話せないので、「スミフル」の社員が通訳となって労働者からの聞き取りを行なうとのことです。労働者らはこれでは自分たちの発言内容が監査官に伝わっているのかわからず、そもそも「スミフル」社員がいる前では自由に聞き取りに答えることができません。彼ら・彼女らが抱えている問題は監査官に十分に訴えられていないのかもしれません。・ギリギリ最低賃金だけど、生きてはいけない
危険できつい労働を担う労働者らに払われる賃金はギリギリ最低賃金程度に過ぎません。標準労働時間で一日365ペソ(約750円)。残業代は一時間当たり52ペソ(約109円)支払われます。フィリピンの全国水準で生活賃金(家族6名が暮らしていくのに必要とされる賃金)は政府発表で月42000ペソ(約88000円)、一日当たりでは1400ペソ(約2900円)です。しかも、NAMASUFAの労働者らは圧縮労働週間制度が適用されているため、毎日は収入がありません。生活賃金には遠く及ばない金額しか労働者らはもらえていないのです。・NAMASUFA労働者に渡るお金はバナナの値段の2%
NAMASUFA労働者の一部は梱包したバナナの数によって給料が決定される歩合制度で働いています。時給制度になっても賃金自体は大きく変わらないといいますが、支払額は一箱あたり22ペソ(約46円)程度です。一箱には約13.5kgのバナナが梱包され、20~22袋分になります。一袋100円だとNAMASUFA労働者の手元に入るのはその2%にしかならないのです。<労働者らへ支援のカンパのお願い>
労働者らは何ヶ月も仕事がなく、スミフルへの抗議行動を続けています。ぜひ生活と活動を支えるカンパをお願いします。
下記要項を事務局までお知らせの上、銀行口座にお振り込みください。
お名前/ご住所/お電話番号/ご支援金額/用途指定寄付(バナナ)であること
カンパ入金口座:
1)ゆうちょ銀行 〇一九支店(019) 当座口座 0163403
名義: アジア太平洋資料センター2)郵便振替口座 00160-4-163403 アジア太平洋資料センター
※寄付に関するお問い合わせ
特定非営利活動法人 アジア太平洋資料センター(PARC)/担当:田中
〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-7-11 東洋ビル3F
TEL:03-5209-3455
E-mail:office (@) parc-jp.org
農地収奪
独占栽培契約書から明らかになった「契約農家」の真実―。<期間の定めのない契約!?>
農地のリースや独占栽培契約を結んだ現地住民からは「5年と聞いていたからサインしたのに、あとから20年だと言われた」といった証言が後を絶ちません。実際に農家が受け取った契約書の写しを見てみると、契約期間のところが空白になっています。農家が受け取っているものは写しに過ぎず、会社側が保有している原本にはあとから日付けや期間を変えてしまうことができるのです。
<辞められない・止められない>
契約期間が締結時に定められていないだけでなく、契約書には農家の側が契約を解除する権利は明確に書かれていません。でも、会社側が辞めるための手続きについてははっきりと書いてあります。会社都合ではいつでも契約を辞められるけど、農家の側は選択肢がありません。
<塩梅は企業の思うままに>
契約農家となってバナナを生産する農家は、作ったバナナをすべて「スミフル」に納品します。その際の買い取り価格は契約書で定められており、何年の契約であっても容易に変更することはできません。一方で、バナナの生産に必要な肥料や農薬、農具一式はすべて「スミフル」から買うことになっています。多くの場合、買い取り価格は据え置きなのに、農薬の価格はどんどん上がっていきます。バナナ1房あたりの農家の利益分は「スミフル」に握られているのです。
そのうえ、生産量調整のために、一日当たりに納品できるバナナの量は「スミフル」が決定します。1房あたりの利益が減っても、たくさん売ることで収入を確保することさえできません。農家の財布に入る金額は全方位から「スミフル」に決められているのです。
そして収入は決して家族が満足に暮らしていけるような額ではありません。
<「介入」という名の「収奪」>
収入が少なくても契約が農家の側からは解除できないので、契約農家はバナナを作り続けなければなりません。しかし、病気になったり、怪我をしたり、あるいは仕事に耐えられなくなってストライキをしたりとバナナ生産に支障が生じた場合、「スミフル」は農地に対する「介入」を行なう権利を持ちます。これは農家が栽培できない・しないのを理由に「スミフル」が農家を無視して自分たちで栽培をつづけられる契約へと契約変更するものです。この介入契約が発動すると、土地の利用権は「スミフル」のものになるので、農家は自分の土地なのに自由に使うことができません。事実上土地を奪われてしまうのです。
大地に降り注ぐ『毒の雨』
制作:IDIS(2015年)/日本語字幕:印鑰智哉
© エシカルバナナ・キャンペーン実行委員会 (2018)
〒169-0072 東京都新宿区大久保2-4-15 サンライズ新宿3F 特定非営利活動法人APLA 気付
TEL:03-5273-8160/FAX:03-5273-8667/e-mail:info@e-banana.info
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